仕事人T氏の新人時代
もともと、いい意味では人に流されない、悪く言えば我の強い性格で、今まで社内や業者様相手にも正論をガンガン言ってきた。この宅地開発グループに配属された当初、生意気にチームのことを「ぬるい」と言うことさえあった。
配属されて1年経った頃、新エリア開拓のために、上司やチームのメンバーと離れて一人で仕事をすることになった。不安はあったがワクワクの方が大きく、興奮が勝った状態でスタートしたが、1ヶ月ほどで現実を思い知らされることになった。
会社の知名度や他社との関係性、周りにすぐに相談できる人がいる環境・・・今までは当たり前にあったものが一つもなく、上司不在の中で本当に小さな部分からルールやしくみを決めていかなければならなかった。業者様とは土地の仕入れどころか、まともに話もしてもらえない。現実に向き合いたくなくて、やるべきことから逃げて、逃げて、どこに向かって走ればいいのかも見失った。部署異動や会社を辞めることも考えた。
それでも、嫌というほど現実逃避した先に「傷だらけでも、挑戦している自分のほうがおもしろい」と気付いた。覚悟を決めた。
前向きになったことで表情は明るくなり、業者様に忙しいからと断られたときにも「次いつお会いできますか?」と食らいつけるようになった。すると少しずつ関係性ができ、土地情報ももらえるようになっていった。
「自分がやらないで、誰がこのエリアで基盤をつくっていくのか」。その思いで、自分を何度も奮い立たせ、がむしゃらに動き続けた。その結果、新エリアでもいくつかの仕入れができ、複数の現場が動き出した。
当初は単身で始めたからこそ、人が増え、事業としての基盤ができつつあることには今でも込み上げるものがある。