◆仕事人T氏の無謀な挑戦
「これは売れへんやろ~」「あんなタコ足みたいな土地、どうすんねん?」
関西のとあるエリアで土地を仕入れることになったときの周囲の反応だ。
今回もまた、同業他社や関係業者からは完全に「非常識な奴ら」という目で見られていた。
「やれ道路を通してくれだの、なんとかして土地を譲ってくれだの、いろいろと厄介な現場やったわ」。
宅地開発グループの責任者であるT氏は振り返る。
毎日のように近隣住民への交渉・提案を繰り返し、販売開始に至るまで約1年ほど経っていたといういわくつきの現場が「某プロジェクト」。
ようやく仕入れたはいいが、「タコ足」にしか見えない、いびつな区割り。
「もちろん、あんなヘンテコな土地、フツウに売ったら、売れるわけない。だからおもろいもん、考えるんや」。
社長はそうやって、過去にいくつも世間が敬遠する現場を早期完売に導いてきた。
「あれは失敗するで」と言われてきた現場ほどすぐに売れた。世間一般で「売れない」という評価がくだされる土地は多々あるが、それは、既存の考えで判断しているから。
だから、我々がやると、世間が思いもしない結果が出せる。
そして、今回も、ヘンテコな土地を、いかにして憧れが生まれる土地に変えていくか、宅地開発グループの試行錯誤が始まった。
いびつな区割りを見たら、きっと住みたくなくなるだろう。
じゃあどうする?区割り図なしで売るか?いや、逆手にとってみてはどうか?
・・・様々な試行錯誤を重ねて、「共用庭」というコンセプトが生まれた。
隣地と隣地の外構をつなげて、街全体を大きな庭にして、住民同士で共有する。
いびつな区割りが、見違えるような街に変身した。
そして、物件説明&決起会で全員の気持ちがひとつになった。
販売の準備は整った。
あとは、期日に建築確認がおりれば、広告活動が開始できる。
折込チラシが勝負の決め手となる。
これで、反応がよければ、年内完売を狙い、反応が芳しくなければ、建築スケジュールの調整をし直し、年をまたいで販売する、という計画もあった。
もちろん、皆、「年内完売」しか見ていなかったが。
⇒続く